けやきクリニック|伊藤 隼 院長|岐阜 岐南町の内科|4人の専門医が集う“チーム医療”で、地域のかかりつけ医を目指す

2025年11月27日に実施したインタビューを元に執筆しています。

「専門的な検査を受けたいけれど、大きな総合病院は待ち時間が長くて大変」
「複数の症状があるけれど、あちこちの病院を回るのは億劫」
「こんな些細な症状で受診してもいいのかな?」

そんな地域の患者さんたちの切実な悩みに真正面から応えるクリニックが、岐阜県羽島郡岐南町にあります。

2019年の開院以来、「けやきに行けば何とかなる」を合言葉に、地域医療の新たな形を追求し続ける「けやきクリニック」。

ここは糖尿病、甲状腺、消化器、血液内科という異なる分野の専門医が集結する、“ミニ総合病院”のような存在です。

今回は、院長である伊藤 隼(いとう しゅん)先生にインタビューを実施しました。

医師を目指した意外なきっかけから、4人の専門医が連携する診療体制の強み、こだわりの院内環境、そして患者さん一人ひとりに寄り添う「オーダーメイド治療」への想いまで、たっぷりと語っていただきました。

目次

祖父が植えた「けやき」の記憶とともに|地元・岐南町でけやきクリニックを開業

医師を目指した意外なきっかけと、クリニック名に込められた祖父への想い。

伊藤先生の「地元・岐南町」への愛情と、開業に至るまでの原点を探ります。

ーーまずは、伊藤先生の医師としてのルーツについてお伺いします。先生は最初から医師を志していたのでしょうか?

伊藤院長
 いえ、実を言うと、最初は全く医師になるつもりはなかったんです(笑)。元々は野球少年で、本気でプロ野球選手を目指していました。白球を追いかける毎日で、医学の道なんて頭の片隅にもありませんでしたね。
 転機が訪れたのは、高校3年生の夏です。部活を引退し、プロへの道が閉ざされたとき、「じゃあ、これからどうしようか」と進路に悩みました。当時、私が通っていた岐阜高校のクラスメイトの大半が医学部を目指していたこともあり、医学部受験を決めたんです。「命を救いたい」といった崇高な志があったわけではありませんでしたよ。
 ただ、医師になってから多くの患者さんと出会い、治療を通じて感謝の言葉をいただく中で、徐々に医師としての自覚と「地域に貢献したい」という強い想いが芽生えていきました。

ーーそこから、なぜこの岐南町の地で開業しようと決意されたのですか?

伊藤院長
 ここは私の地元であり、私が生まれ育った大切な場所だからです。実はこのクリニックが建っている場所には、かつて私が子供の頃に住んでいた家がありました。私が生まれたとき、祖父が記念に「けやき」の木を植えてくれたんです。
 35年という歳月を経て、その木は建物でいうと3階以上の高さにまで立派に育っていました。クリニックを建設するにあたって、どうしても伐採しなければならなかったのですが、非常に心苦しくて……。そこで、祖父への感謝と、この土地への愛着を残したいという想いから、クリニック名を「けやきクリニック」と名付けました。

ーー「けやき」という名前には、ご家族の歴史と先生の地元愛が込められているのですね。

伊藤院長
 そうですね。医師になってからも、「最終的に貢献するなら地元で」という想いは常にありました。大学病院や総合病院での勤務医時代、最先端の医療に触れる中で、「いつかこのレベルの医療を、地元の皆さんに身近な場所で提供したい」というビジョンを描くようになったんです。
 自分が生まれ育ったこの場所で、地域の皆さんが安心して通える、そして困ったときに真っ先に思い出してもらえるようなクリニックを作りたい。それが、けやきクリニックの原点ですね。

糖尿病内科・甲状腺内科・消化器内科・血液内科|4人の専門医が集う“チーム医療”の強み

一つのクリニックに複数の専門医が在籍する、全国でも珍しい診療体制。

なぜ「チーム医療」が必要なのでしょうか。そのメリットと医師同士の連携の裏側に迫ります。

ーーけやきクリニックの最大の特徴は、複数の専門医が在籍している点だと思います。なぜ、このような体制をとられたのでしょうか?

伊藤院長
 一人の医師が全ての病気を完璧に診るには、現代の医学はあまりにも複雑化しすぎています。一般的なクリニックでは院長先生がお一人で診察されることが多いですが、私は「それぞれの得意分野を持つ医師が集まれば、より質の高い医療が提供できるはずだ」と考えました。
 現在、当院には私の専門である糖尿病内科に加え、大学時代からの盟友である血液内科専門医の後藤先生、消化器内科専門医の湯村先生、そして私の指導医でもあった甲状腺専門医の澁谷先生という、計4名の医師が在籍しています(2025年11月時点)。

ーーまるで総合病院のような体制ですね。患者さんにとってはどのようなメリットがあるのでしょうか?

伊藤院長
 最大のメリットは、「一つのクリニックで複数の専門的な視点からの診療が受けられる」こと、そして「セカンドオピニオンに近い相談が院内で完結する」ことです。例えば、糖尿病の患者さんは、合併症のリスクとして消化器系の病気や感染症にも注意が必要です。もし当院に通院中の糖尿病患者さんに胃の不調が見つかった場合、すぐに消化器専門医である湯村先生に相談し、院内で精密な胃カメラ検査を行うことができます。
 また、健診で「白血球の数値がおかしい」「甲状腺が腫れている」と言われた場合も、わざわざ別の大きな病院を紹介して予約を取り直すことなく、当院の専門医がスムーズに対応できます。

ーー「けやきクリニックに行けば何とかなる」という安心感がありますね。

伊藤院長
 まさにそれを目指しています。医師同士の連携も非常に密接です。難しい症例については、診察室の裏で「この患者さんのデータ、どう思う?」「この薬の調整、君ならどうする?」と、日常的にディスカッションを行っています。
 自分の専門外の領域について、信頼できる仲間にすぐ相談できる環境は、医師である私たちにとっても非常に心強いですし、結果として患者さんに還元できる医療の質も高まると確信しています。
 また、私一人ですべてを抱え込むのではなく、チームで診療にあたることで、医師自身も適度な休息を取ることができます。医師が疲弊せず、常に万全のコンディションで患者さんと向き合えることも、良い医療を提供する上では欠かせない要素だと考えています。

内科医の使命は「大病を防ぐ」こと|けやきクリニックの生活習慣病治療

命に関わる大病を未然に防ぐことこそ、内科医の最大の使命だと伊藤院長は語ります。

薬だけに頼らない食事・運動療法や、最新の糖尿病治療薬に対するスタンスについて伺いました。

ーー先生のご専門である「糖尿病内科」についてお聞きします。先生は内科医の役割をどのようにお考えですか?

伊藤院長
 内科医の仕事には、「病気を治す」という側面だけでなく、「致命的な大病を未然に防ぐ」という極めて重要な役割があります。糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は、初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、放置すれば動脈硬化が進行し、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気を引き起こします。
 外科手術のような派手さはありませんが、地道に数値をコントロールし、患者さんの未来を守る。これこそが医療の根本であり、私が内科の道を選んだ理由でもあります。

ーー生活習慣病の治療において、けやきクリニックならではのアプローチはありますか?

伊藤院長
 当院では、「薬に頼りすぎない治療」を重視しており、そのために管理栄養士による食事指導と運動療法に力を入れています。現在、当院には4〜5名の管理栄養士が常駐しています。これは一般的なクリニックとしてはかなり珍しいと思います。

ーー確かに管理栄養士さんがそこまで充実しているのは驚きですね。

伊藤院長
 もちろん薬を飲めば数値は下がりますが、根本的な生活習慣が変わらなければ、薬の量は増える一方です。管理栄養士が患者さんの食生活を丁寧にヒアリングし、「これなら続けられそう」という改善策を一緒に考える。そうして生活習慣の見直しがうまくいけば、薬を減らすことができますし、場合によっては薬が不要になる患者さんもいらっしゃいます。
 また、院内には運動療法を行えるスペースや、2階にはトレーニングジムも設置し(スタッフの健康増進も兼ねていますが)、運動の重要性も伝えています。私自身も最近、マッチョを目指してトレーニングを始めました(笑)。まずは自分自身が健康でなければ、説得力がありませんからね。

ーー最近話題の「GLP-1受容体作動薬」などの新しい薬についてはどうお考えですか?

伊藤院長
 GLP-1受容体作動薬やマンジャロといった新しい薬剤については、岐阜県内でもトップクラスの処方経験があると自負しています。これらの薬は、適切に使えば劇的な効果を発揮します。中にはごく少量の投与で20キロ、30キロと減量に成功し、血糖値が改善した患者さんもいらっしゃいます。
 ただし、流行しているからといって安易に使うべきではありません。最近は美容・ダイエット目的での不適切な使用が社会問題になっていますが、当院ではあくまで「治療が必要な方」に対して、適切な用量を慎重に見極めて処方しています。
 副作用が出た場合の対応や、やめ時の判断などは、やはり専門医の経験と知識が必要です。「注射の手技指導」や「トラブル時の対応」も含め、責任を持って管理できるのが当院の強みです。

地域でも希少な「甲状腺専門医」と「苦痛の少ない内視鏡検査」|けやきクリニックの特徴

遠方からも患者さんが訪れる「甲状腺」と「消化器」の高度な専門医療。

クリニックレベルでは異例の最新検査機器導入には、ある理由がありました。

ーー糖尿病以外の専門分野についても詳しく教えてください。特に「甲状腺」を専門的に診られるクリニックは少ないと聞きます。

伊藤院長
 甲状腺疾患(バセドウ病や橋本病など)は、女性に多い病気ですが、専門医が少なく、総合病院まで行かないと詳しい検査ができない地域も多いのが現状です。当院では、甲状腺専門医である澁谷先生が診療にあたっているだけでなく、「アキュラシード(Accuraseed)」という甲状腺ホルモン迅速検査装置を導入しています。これはクリニックとしては岐阜県内で初めて導入したものです(※導入当時)。

ーー迅速検査ができると、何が違うのでしょうか?

伊藤院長
 通常、甲状腺ホルモンの血液検査結果が出るまでには数日かかり、患者さんは結果を聞くためだけに再度来院しなければなりません。しかし、この装置を使えば、採血から約10分〜数十分で正確な数値が出ます。つまり、その日のうちに診断し、その場で薬の調整や治療方針の決定ができるのです。「何回も通わなくて済む」「すぐに不安が解消される」と、遠方から来られる患者さんにも大変喜ばれています。

ーー消化器内科についてはいかがでしょうか?

伊藤院長
 消化器内科では、専門医の湯村先生を中心に、苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラ検査を提供しています。設備にもこだわっており、富士フイルム社の最上位機種の内視鏡システムや、被ばく低減技術を搭載した最新型マルチスライスCTも導入しています。
 お腹の調子が悪いとき、単なる胃もたれなのか、それとももっと重篤な病気が隠れているのか。CTや内視鏡を使って、クリニックレベルで即座に精密検査ができる体制を整えているのは、当院の大きな特徴です。

「あなた」に合わせたオーダーメイド治療|伊藤 隼 院長が大切にしていること

同じ病気でも、患者さん一人ひとりの背景や性格によって最適なアプローチは異なります。

伊藤院長が診療の現場で大切にしている信念についてお聞きしました。

ーー診療において、伊藤先生が大切にしている「哲学」や「ポリシー」は何ですか?

伊藤院長
 かっこいい言葉で「命を救う」とはなかなか言えませんが、強いて言うなら「患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療」です。医学的なガイドライン(治療の指針)は確かに存在しますし、専門医が提供する治療内容は、基本的にはどこも標準化されたものです。
 しかし、患者さんは一人ひとり違います。性格も違えば、生活背景も違う。仕事が忙しくて通院が難しい人もいれば、几帳面に記録をつけるのが好きな人もいます。

ーー同じ病気でも、人によってアプローチを変えるということですね。

伊藤院長
 診察室に入ってきた瞬間の表情、言葉の選び方、服装の雰囲気などから、「この患者さんは何を求めているのか」「どういう伝え方をすれば響くのか」を常に探っています。例えば、厳しく指導した方が頑張れる人には少し強めに発破をかけますし、逆に不安が強い人には優しく背中を押すような言葉をかけます。
 治療の内容自体は同じでも、それをどう届けるかという「伝え方」や「接し方」は、その人の幸せを考えたときに千差万別であるべきです。

ーー先生の温かみのあるお人柄が伝わってきます。

伊藤院長
 日々の積み重ねが、患者様との信頼関係に繋がると信じています。また、治療方針に迷ったときの判断基準として、昔先輩から教わった「迷ったら患者の利益に」という言葉を大切にしています。
 「この検査は本当に必要か?」「この治療は患者さんの負担に見合うか?」と迷ったとき、主語を「自分(病院の都合)」ではなく「患者さん」に置き換えて考える。そうすれば、自ずと正しい答えが見えてきますし、後々のトラブルもありません。

ーー最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

伊藤院長
 けやきクリニックは、糖尿病や甲状腺、消化器などの専門性を持ちながらも、地域の皆さんが風邪やちょっとした不調のときに気軽に立ち寄れる「かかりつけ医」でありたいと願っています。専門医が複数いるというと敷居が高く感じるかもしれませんが、私たちのスタンスは「来るもの拒まず」です。
 「どこの科に行けばいいかわからない」という場合でも、まずは相談に来てください。当院には複数の引き出しがありますし、もし当院で対応できなければ適切な病院へ紹介する目利きもできます。「けやきクリニックに行けば何とかなる」。そう思っていただけるよう、スタッフ一同、誠心誠意サポートさせていただきます。
 健康診断で気になる数値が出た方、長引く不調にお悩みの方、ぜひ一度、私たちにお話を聞かせてください。

けやきクリニック

診療科目糖尿病内科・甲状腺内科・消化器内科・血液内科・総合内科
住所〒501-6003
岐阜県羽島郡岐南町平島5丁目118番地
診療日(月・火・水・木・金)
8:30~12:00
15:00~18:00
(土)8:30~13:00
休診日日曜日・祝祭日
院長伊藤 隼
TEL058-213-3310
最寄駅名鉄各務原線「手力駅」より徒歩20分駐車場あり
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この記事を書いた人

診療ナビ」はアドバイザーナビ株式会社が運営する医療情報発信メディアです。開業医の先生方に直接取材を行い、診療への姿勢や先進医療への取り組み、地域医療への貢献、さらには医療業界に対する考えや想いをお届けします。読者の皆さまにとって、医療をより深く理解し、身近に感じていただける発信を続けてまいります。

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