かなまち慈優クリニック|理事長 高山 哲朗が語る「患者のための“まっとうな医療”」|葛飾区金町の内科・訪問診療

2025年10月10日に実施したインタビューを元に執筆しています。

「最近、体の不調が気になるけど、どの病院に行けばいいかわからない…」

「親の介護が必要になり、葛飾区周辺で親身になってくれる訪問診療の先生を探している」

地域に根差したクリニックが増える一方で、心から信頼できる「かかりつけ医」を見つけるのは、意外と難しいものです。

「専門用語ばかりで、こちらの話をあまり聞いてくれなかった」
「流れ作業のように感じてしまった」

そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、葛飾区金町で地域医療を支える「かなまち慈優クリニック」の高山 哲朗(たかやま てつろう)理事長にお話を伺いました。

診療哲学の根底には、医療業界の慣習に流されることなく、「まっとうな医療を、まっとうに届けたい」という、熱く、そして揺るぎない信念があります。

目次

高山 哲朗医師の原点|「内科医として患者を救いたい」という情熱

地域の人々から厚い信頼を寄せられる高山理事長。

まずは、高山理事長が医療の道を志したきっかけ、その原点についてお話を伺いました。

ーー先生が医師を志されたエピソードを教えていただけますか?

高山理事長
 本当にシンプルな理由で、子どもの頃、大好きだったおばあちゃんから「お医者さんになりなさい」と、ずっと言われて育ったんです(笑)。いわゆる「おばあちゃん子」だったんですね。そのおばあちゃんが、私が小学生の時に病気で亡くなってしまって。その死を目の当たりにした時に、子ども心に純粋に「人の助けになる仕事がしたい」と思いました。その想いが、おばあちゃんの願いであった「医師」という職業に自然と結びついたんだと思います。
 医師になるという目標を定めてからは、当時「臨床の慶應」という言葉に惹かれ、慶應義塾大学医学部への進学を目指しました。医師を志した中学生の頃の「患者さんの為に力を尽くしたい」という気持ちは、今でも私の根幹にあります。また、クリニックを法人化する際に「志嵩会(しすうかい)」という名前にしたのも、医師を志した頃の初心と、常により高みを目指す気持ちを忘れないように、という思いを込めています。

ーー数ある診療科の中で、なぜ内科、そして消化器内科を専門に選ばれたのでしょうか?

高山理事長
 もともと、手術で治す外科よりも、薬や研究の力で病気を治していく内科の分野に強い興味がありました。学生時代から免疫学の研究室に出入りしていて、世の中にある多くの難病に「免疫」が関わっていることを学んだんです。その研究の流れを臨床でも活かせる科に進みたい、という思いがありました。
 また、漠然とではありますが「内科医らしい内科」に進みたいとも考えていました。消化器内科は、食道・胃・腸から肝臓・膵臓まで、非常に守備範囲が広い。感染症もあれば癌や難病もある。診断から治療までを一人で完結できるダイナミックさがあり、非常にやりがいのある分野だと感じました。
 実は、研修医時代は血液内科と消化器内科で迷った時期もありました。ただ、当時の血液内科は本当に過酷な環境で…。先輩方はほとんど家に帰れず、家庭との両立が難しい状況を目の当たりにして、このままでは自分が倒れてしまうかもしれない、と思ったんです。
 将来的に、大学で専門的な研究を続けるか、あるいは開業して地域医療に貢献するかのどちらかに進みたいと考えていたので、より開業医として多くの患者さんを診ることができるかなと考えて消化器内科を選びました。

葛飾区金町に根ざして|「まっとうな医療を、まっとうに届けたい」

大学病院などで専門的な医療を追求する道もあった中で、高山理事長は地域医療に携わりたいと感じ、「開業医」の道を選んだそうです。患者一人ひとりと真摯に向き合いたいという、髙山理事長の診療哲学に迫ります。

ーー先生が診療において最も大切にされている「診療哲学」は何でしょうか?

高山理事長
 一言でいうと「まっとうな医療を、まっとうに届けたい」、これに尽きますね。大学病院を辞めた後、終末期の患者さんを中心に訪問診療を専門とするクリニックに勤務しました。そこで経験したのは、大学病院の最先端医療とはまた違う、「泥臭い」けれど、患者さんの人生に深く寄り添う臨床の現場でした。
 国は今、医療費削減の観点から在宅医療を推進しています。訪問診療は外来よりも診療報酬が高く設定されていることもあり、ビジネスチャンスと捉えて参入するクリニックも少なくありません。しかし、私がそこで見たのは、経済的な合理性だけでは語ることのできない、在宅医療の大きな価値でした。
 病院のベッドの上で最期を迎えるのが当たり前だと思っていたのですが、実際は、住み慣れたご自宅に戻られた患者さんの多くが、以前より元気になり、結果として穏やかな時間が増えていくことがあります。医学的なエビデンスがあるわけではありませんが、これは在宅医療に関わる医師なら誰もが肌で感じることだと思います。ご家族の負担は確かに大きいですが、患者さんご本人が最も安らげる場所で過ごせることは非常に重要だと感じました。
 この経験から、患者さんのためになる医療を、自分たちの手の届く範囲で誠実に提供していきたい、と強く思うようになったんです。

ーー「まっとうな医療」を実践する上で、特に意識されていることはありますか?

高山理事長
 残念ながら、医療の世界にもビジネスライクな側面は存在します。病院同士の付き合いや紹介の慣習、利益だけを考えて患者さんの意向を無視するようなケースも、残念ながら見聞きすることがあります。
 私たちは、そういった業界の力学や慣習には関与しません。派手な宣伝活動や、病院への接待なども行いません。ただただ、目の前の患者さんにとって何が最善かを考え、私たちが提供できる誠実な医療を実直に届ける。そして、その姿勢に共感してくださる患者さんや、連携先の病院・クリニックの方々と一緒にやっていければ良い、と考えています。自分たちの利益ではなく、常に患者さんのことだけを考えて行動する。それが、私たちが考える「まっとうな医療」です。
 幸い、当院には副理事長をはじめ、同じ志を持つ素晴らしい医師たちが集まってくれています。このチームで、できる範囲のことを、正々堂々とやっていきたいと思っています。

ーー開業医として専門性を担保するために、何か取り組まれたことはありますか?

高山理事長
 私は開業するまで、消化器や内視鏡の専門医資格はありましたが総合内科の専門医資格を持っていませんでした。しかし、地域でクリニックを開き、患者さんの健康を預かる以上、一定の知識と技術レベルを客観的に証明することは、患者さんに対する「礼儀」だと考え、開業にあたって専門医資格を取得しました。
 もちろん、資格があるから優れた医師だ、というわけでは決してありません。ただ、専門医試験の会場は空席だらけで、「今年は難しかった」と嘆く先生方も多く、合格は簡単ではありませんでした。それでも、専門性を担保するため一つの基準として、専門医資格を持つことは大切ですし、そのための努力は続けるべきだと考えています。
 医師にとって最も大切なことは、「学び続けること」だと思っています。医学は日進月歩です。昨日までの常識が、今日には変わっていることもあります。常にアンテナを張り、最新の知見を学び、それを分かりやすく患者さんに還元していく。その繰り返しこそが、信頼に繋がると信じています。

外来から訪問診療まで|かなまち慈優クリニックが提供する医療

「まっとうな医療」という信念のもと、かなまち慈優クリニックでは、風邪などの日常的な不調から、専門的な治療、そして在宅での看取りまで、幅広い医療を提供しています。

クリニックの特徴や診療体制について、詳しく伺いました。

ーーかなまち慈優クリニックでは外来診療と訪問診療、両方に力を入れていらっしゃいますね。

高山理事長
 はい。外来では、予約なしでいつでも受診できる「フリーアクセス」を基本にしています。体調が悪い時に、何日も先の予約を待つのは辛いと思います。もちろん、当日お待たせしてしまうことも多いのですが、「困った時にいつでも駆け込める」という安心感を大切にしたいんです。月曜日から土曜日まで、地域の皆さんのためにクリニックの扉を開けています。
 そして、外来に来られなくなった方々のために、24時間365日体制の訪問診療を行っています。私自身が訪問診療の価値を強く感じていますし、長年外来で診てきた患者さんから「先生に家に来てほしい」と頼まれたら、断るわけにはいきませんから。
 ただ、皆さんに知っていただきたいことは、訪問診療という選択肢があることを知ってほしいということです。早めに関係性を築いておくことで、いざという時にスムーズに対応できますし、24時間対応の窓口があるというだけで、ご本人やご家族の安心感に繋がります。無理に訪問診療を勧めることはありませんので、少しでも不安があれば、まずは気軽に相談していただきたいですね。

ーー訪問診療では、どのような患者様が多く、どのような体制で臨まれているのでしょうか?

高山理事長
 ご高齢で通院が困難になった方はもちろん、がんの末期などで「最期は家で過ごしたい」と希望される、比較的お若い方もいらっしゃいます。
 当初は私一人で夜中の往診も対応していましたが、外来診療との両立が難しくなり、患者さんにご迷惑をおかけしかねない状況になりました。そこで、信頼できる仲間を増やし、現在は複数の医師でチームを組んで対応しています。これにより、葛飾区・足立区から、千葉県の市川市、埼玉県の三郷市あたりまで、かなり広いエリアをカバーできています。
 患者さんが夜中に急変した際にも、チームの誰かが駆けつけられる体制を整えています。もちろん外注のドクター派遣サービスを利用すればコストは抑えられますが、患者さんの情報をしっかり共有し、責任を持って診療にあたるためには、顔の見える決まったチームで対応することが重要だと考えています。大変ではありますが、これも「まっとうな医療」を実践するためには不可欠な体制です。

ーー外来で特に多く見られる症状や疾患は何ですか?また、かなまち慈優クリニックの強みについても教えてください。

高山理事長
 やはり、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の患者さんが最も多いですね。私の専門である消化器内科、特にIBD(炎症性腸疾患)の患者さんが、私の評判をどこかで見つけて遠方から来てくださることもあります。
 そして、当院の大きな強みの一つが、副理事長が非常に優秀な血液内科医であることです。彼の専門知識と技術のおかげで、クリニックでありながら高いレベルでの輸血治療が可能です。また、骨髄移植のドナーになるための専門的な選定も彼が担当しており、ドナーの方が相談に来られることもあります。この地域において、これほど優れた血液内科医はなかなかいないと自負しています。
 私たちのクリニックだけで完結できない検査や治療が必要な場合は、近隣の専門医や提携病院と密に連携し、患者さんにとって最適な医療が受けられるようにご案内します。あくまでも患者さんのご希望を第一に考え、一緒に治療方針を決めていきますので、ご安心ください。

癒やしと安心を届ける|かなまち慈優クリニックの細やかな配慮とこだわり

高山理事長の「まっとうな医療」は、正確な診断や治療だけにとどまりません。

患者一人ひとりの心に寄り添い、不安を和らげるための細やかな配慮が、クリニックの随所に息づいています。

その細やかなこだわりについてお聞きしました。

ーー「かなまち慈優クリニック」というお名前と、ジャスミンがモチーフのロゴマークに込めた想いを教えてください。

高山理事長
 クリニックの名前は、「慈しみの心と優しさ、そして優れた医療を提供できるように」という願いを込めて名付けました。医療はどうしても専門的な知識が先行し、医師からの一方的な説明になってしまいがちです。しかし、それが患者さんに不安や不快な思いをさせては本末転倒です。
 ロゴマークのモチーフである「茉莉花=ジャスミン」は、”神からの贈り物”という由来を持ち、その豊かな香りは”香りの王様”とも呼ばれています。そして、ジャスミンには心を落ち着かせる癒やしの効果もあるとされています。私たちが提供する治療が、患者さんの身体だけでなく、心の癒やしにまで至ることができれば、これ以上の喜びはない。そんな想いを、このロゴマークに託しています。

ーー患者さんとコミュニケーションを取る上で、特に心がけていることはありますか?

高山理事長
 医学的に正しいことだけを一方的に押し付けない、ということです。これは、終末期医療や緩和ケアの現場で学んだ、非常に大切な視点です。もちろん、現時点で最も正しいと思われる根拠のある医療情報を提供することは医師の責務です。しかし、それが必ずしも患者さんご本人の幸せに繋がるとは限りません。
 大切なのは、医学的な正しさを示した上で、その方の気持ちにどこまでも寄り添うこと。こちらがまず「聞く」姿勢を徹底し、患者さんが何を望み、どう生きたいのかを深く理解する。そうして初めて、その方にとっての「最善の医療」を一緒に見つけていくことができるのだと思います。最近では、診察に来られた本来の理由とは全く違うお悩みをご相談いただくことも増え、少しずつ話しやすい雰囲気を作れているのかな、と感じています。

ーー病気の予防や、健康への意識を高めてもらうための取り組みは何かされていますか?

高山理事長
 はい、医療情報を積極的に発信していくことは、地域のかかりつけ医として非常に重要な役割だと考えています。院内では、健康に関する情報をまとめた「院内通信」を作成してお渡ししています。また、私個人としても、ウェブサイトや雑誌などから医療情報の監修や取材の依頼があれば、できる限りお受けするようにしています。
 今は、ほとんどの病気が早期発見・早期治療によって、重症化を防げる時代になりました。だからこそ、「何かあってから」ではなく「何かある前に」行動していただくことが大切です。そのきっかけを作るための啓発活動は、これからも地道に続けていきたいですね。

AIで未来の病気を予測する?臨床医にして研究者である高山理事長のもう一つの顔

地域に根差した温かい医療を提供する一方で、高山理事長は、臨床医学にAI(人工知能)を応用する研究の第一人者でもあります。

その先進的な取り組みは、病気の早期発見・予防に新たな可能性をもたらしています。

ーー先生は臨床の傍ら、AI(人工知能)の研究もされていると伺いました。

高山理事長
 実は私自身、ライフワークとして長年、臨床医学におけるAIの応用研究に携わってきました。査読付学術論文も複数発表しています。
 そして、当院の人間ドックでは、その研究成果を活かした「生活習慣病の将来発症予測システム」を導入しています。これは、健康診断で得られた血液検査のデータや身長・体重などを入力することで、数年後に高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームを発症する確率をAIが予測するというものです。
 例えば、タレントのマツコ・デラックスさんが「人間ドックでは何も異常がない」と話していましたが、体格の良い欧米人なら問題なくても、日本人は比較的痩せていても糖尿病などになりやすい体質があります。こうした個々人の体質や背景まで考慮したリスク評価は、従来の健康診断だけでは困難でした。
 このシステムは、約2万人分の過去の健診データをもとに、入力されたデータと近い人の経過をAIが参照して将来を予測します。そして、ただ予測するだけでなく、そのリスクを回避するためには「あと何kg減量すれば良いか」といった具体的な目標まで提示してくれます。自分の未来の健康状態が可視化されることで、生活習慣を改善するモチベーションに繋がると考えています。このシステムの基本エンジン開発には、私も深く関わっています。

ーーAI以外にも、ユニークな研究や活動をされているそうですね。

高山理事長
 今大きな興味を持っているのは、九州産業大学の先生方と共同で進めている「博物館浴」という研究です。これは、博物館でアート作品を鑑賞することが心身にどのような良い影響を与えるかを科学的に証明しよう、という試みです。アートが持つ癒やしの力を、医療の現場にも活かせないかと考えています。
 また、在宅医療や胃ろう(お腹から直接栄養を摂るための医療処置)に関する学会やNPO法人の理事も務めています。胃ろうは、時に患者さんの尊厳を損なうものとして議論されることもありますが、もともと患者さんの苦痛をとるために開発された技術です。私たちは決して無条件に推奨するわけではありませんが、必要な方に適切に行ってほしいと考えています。患者さんとご家族にとって、より良い選択肢は何かを常に考え、議論し、情報を発信していく活動に、微力ながら貢献したいと思っています。

「いつでも気軽に相談を」|高山理事長から地域の皆様へのメッセージ

最後に、クリニックの今後の展望と、地域の皆様へのメッセージをいただきました。

ーー最後に、クリニックの今後の展望と、地域の方々へメッセージをお願いします。

高山理事長
 今後の展望といっても、特別なことはありません。これまで通り、医療者仲間から見ても「あそこのクリニックは、ちゃんとしているな」と思われるような、まっとうな医療を提供し続ける。ただそれだけです。
 外科医の腕は手術の上手さで分かりやすいですが、内科医の実力は外からはなかなか見えにくいものです。しかし、私たち同業者同士だと、その医師がどのような診療をしているか、少し話せばすぐに分かります。自分たちの良心に恥じない、誠実な仕事をこれからも続けていきたい。それが、私と、ここに集ってくれた仲間たちの共通の思いです。
 ですから、地域の皆様には、「とりあえず、かなまち慈優クリニックに相談してみよう」と思っていただけたら嬉しいです。何か体の不調を感じたら、あるいはご家族のことで何か不安があれば、どんな些細なことでも構いません。専門外のことだったとしても、お話を聞いた上で、より適切な医療機関にご案内することができます。私たちは、そのための最初の入り口でありたいのです。
 今の医学では、多くの病気が早期発見・早期治療によって治癒を目指せるようになりました。ご自身の体を守るために、ぜひ私たちのような地域のクリニックを気軽に利用してください。皆さんの健康に貢献できるよう、これからもチーム一丸となって尽力していきます。

かなまち慈優クリニック

診療科目内科、消化器内科、血液内科、 消化器内視鏡、訪問診療
住所〒125-0041
東京都葛飾区東金町1丁目41-3 No.5ウバノビル2F
診療日(月・火・水・木・金)
9:00〜12:30 / 14:00〜18:00
(土)
9:00〜14:00
※訪問診療については直接医院にお問い合わせください
休診日日・祝
理事長高山 哲朗
TEL<クリニックへのお電話>
03-3609-0133
<訪問診療のご相談>
03-5876-4801
最寄駅JR常磐線「金町駅」より徒歩3分
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この記事を書いた人

診療ナビ」はアドバイザーナビ株式会社が運営する医療情報発信メディアです。開業クリニックの先生方に直接取材を行い、診療への姿勢や先進医療への取り組み、地域医療への貢献、さらには医療業界に対する考えや想いをお届けします。読者の皆さまにとって、医療をより深く理解し、身近に感じていただける発信を続けてまいります。

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