2025年9月9日に実施したインタビューを元に執筆しています。
「いつかは子どもを」と考えてはいるけれど、仕事もキャリアも大切。
忙しい毎日の中で、不妊治療はどこか遠い世界の話だと思っていませんか?
今回お話を伺ったのは、秋葉原駅から徒歩1分の場所にある「あさひレディスクリニック」院長 高橋青子先生。
長年にわたり大学病院や専門クリニックで不妊治療の最前線に立ち、豊富な経験と知識を持つドクターです。
この記事では、高橋院長が不妊治療にかける想いやクリニックの強み、そして私たちが自分の身体と向き合うために知っておくべきことまで、深く掘り下げていきます。
高橋 青子院長がクリニックに込めた想いと温かい空間へのこだわり
秋葉原という都心にありながら、院内に一歩足を踏み入れると、そこには喧騒を忘れさせるような穏やかで開放的な空間が広がります。
高橋院長が語る、クリニックのコンセプトや開業に至った経緯、そして「あさひ」という名前に込められた想いに迫ります。
ーーまず、クリニック名である「あさひ」には、どのような想いが込められているのでしょうか?
高橋院長
「あさひ」という言葉には、元気、そして「希望」というイメージがあります。不妊治療は、時に先が見えない不安との闘いになることもあります。だからこそ、私たちが患者様に寄り添い、一緒に治療を乗り越えていくことで、希望の光を灯したい。そんな想いを「あさひ」という名前に込めました。私自身、日本に来た留学生時代から今日まで、苦しい時にはいつも誰かに助けられてきました。特に、来日初日に空港で偶然出会った日本人のおばあちゃんは、私にとって日本の母のような存在です。そうした方々とのご縁や、恩師、友人、同僚への感謝の気持ちは尽きません。
このクリニックを通して、お世話になった方々へ恩返しをする気持ちで、私が培ってきた専門的な知識や技術を、不妊治療に励む方々に還元していきたい。皆さまが、ご自身の赤ちゃんをその腕に抱ける日まで、「あさひ」の光のように温かく、全力でサポートさせていただきたいと思っています。
ーー先生がこの秋葉原という場所で開業されたのには、何か理由があるのでしょうか?
高橋院長
一番の理由は、通いやすさです。特に不妊治療は、定期的な通院が必要になります。今は働く女性がとても多いですから、忙しい毎日の中で治療を両立させるためには、通院の利便性が何よりも大切だと考えました。駅から近いこと、これは開業する上で最優先した条件です。実際に、遠方から新幹線などで通ってくださる患者様もいらっしゃいます。
また、地方のクリニックで治療を受けていた方が東京に引っ越してこられた際に、治療の引き継ぎ先を探して当院にたどり着かれるケースもあります。地方のクリニックとの連携は、情報共有などの手間がかかるため敬遠されがちなのですが、逆の立場で考えれば、自分の患者様が地方に行った時に誰かに診てほしいと切に願うはずです。困っている方がいれば、できる限りお力になりたいと思っています。
ーー院内はとても天井が高く、明るく開放的な雰囲気ですね。空間づくりでこだわった点があれば教えてください。
高橋院長
ありがとうございます。こだわった点はたくさんありますが、一番の特徴は、待合室にモニターやテレビを一切設置していないことです。病院に来ると、どうしても緊張したり、ストレスを感じたりすることがあると思います。特に不妊治療で通われる患者様は、非常に繊細な気持ちを抱えていらっしゃいます。
だからこそ、「病院に来た感じがしない」、温かみのあるクリニックを作りたかったのです。院内では余計な情報を遮断し、少しでもリラックスして過ごしていただきたい。そのために、天井を高くして開放感を持たせ、受付の椅子や壁紙の色も、ストレスを軽減できるよう明るい色調を選びました。季節のお花を飾るのも、そうした想いからです。
シンプルでありながら、温かさにあふれた空間。それが私のこだわりです。ただ、呼び出しが聞こえにくい時があるのが少し悩みどころではありますね(笑)。
保険診療をベースとした不妊治療|高刺激・低刺激を使い分けるオーダーメイドのアプローチ
2022年から不妊治療への保険適用が拡大し、治療へのハードルは以前より下がっていると言います。
あさひレディスクリニックでは、保険診療を基本としながらも、画一的ではない、患者様一人ひとりに合わせた治療計画を大切にしています。
その強みと、患者様と向き合う上で心がけていることを伺いました。
ーーこちらのクリニックでは、どのような患者様が多く来院されますか?
高橋院長
大半が不妊治療を目的とした患者様です。次いで、ピルの処方や生理痛のご相談など、一般的な婦人科系のお悩みで来られる方も多くいらっしゃいます。そして、患者様の多くが保険診療を選択されています。2022年に不妊治療への保険適用が拡大された影響は非常に大きく、若い世代の方々が以前よりも気軽に相談に来てくださるようになりました。
ーー先生の不妊治療における一番の強みは何だと思われますか?
高橋院長
体外受精や顕微授精の際に、質の良い卵子を採取するために行う「卵巣刺激法」には、大きく分けて「高刺激法」と「低刺激法」があります。私はこれまで、高刺激法をメインに行う大学病院と、低刺激法をメインに行う専門クリニックの両方で数多くの症例を経験してきました。その経験から、患者様に合わせて高刺激法と低刺激法のどちらも柔軟に提案し、実施できることが強みだと考えています。
どちらかの方法に偏るのではなく、患者様のご年齢、卵巣の機能、そして何よりも「体に優しい方法がいい」「少しでも多く卵子を採りたい」といったご本人のニーズをしっかりと伺った上で、プランを一緒に考えていきます。不妊治療に「誰にでも当てはまる正解」はありません。だからこそ、引き出しの多さが、オーダーメイドの治療を実現するためには不可欠だと考えています。
ーー患者様と向き合う上で、一番大切にされていることは何ですか?
高橋院長
何よりも患者様ご自身の考えです。特に初診の際には、時間をかけてじっくりとお話をお伺いするようにしています。目の前の妊娠はもちろん大切ですが、その先にある人生設計、「お子さんは何人ほしいですか?」といった将来設計まで共有していただくことが、治療計画を立てる上で非常に重要になるからです。
例えば、38歳で第一子を妊娠された方が、お子さんを2人希望されているとします。妊娠・出産・授乳期間を考えると、次の妊活を開始できるのは40歳頃になります。その場合、第一子の治療の際に、第二子以降のために受精卵を凍結保存しておくという選択肢も考えられます。
不妊治療は、1回や2回で終わることは少なく、早くても半年、長ければ年単位のお付き合いになります。だからこそ、初回の対話を通じて信頼関係を築き、患者様ご夫婦が納得できるゴールに向かって、二人三脚で歩んでいくことを何よりも大切にしています。
今知っておきたい卵子凍結と自分の身体のこと
近年、キャリアプランなどを理由に将来の妊娠に備える「卵子凍結」が注目されています。
一方で、「自分にはまだ関係ない」と感じている人も少なくないかもしれません。
高橋院長は、年齢にかかわらず、早めに自分の身体と向き合うことが大切だと語りました。
ーー最近、卵子凍結を希望される方は増えていますか?
高橋院長
2023年がピークだったように感じます。東京都が助成金制度を開始したことが大きなきっかけとなり、多くの方に興味を持っていただきました。ただ、助成金があっても、採卵や凍結保存にはある程度の費用がかかるため、誰もが気軽にできるというわけではないのが現状です。
ーー不妊や将来の妊娠について、どのタイミングでクリニックに相談するのが良いのでしょうか?
高橋院長
「不妊かも」と悩んでからでは、少し遅いかもしれません。私が強くお伝えしたいのは、「結婚して、子どもが欲しいな」と思ったら、まずは一度検査に来ていただきたいということです。ご自身でタイミングを合わせて3〜4ヶ月ほどうまくいかなかったら、受診を考える一つの目安だと考えてください。
特に、女性の妊娠のしやすさ(妊孕性)は35歳を境に緩やかに下降していくとされています。もちろん個人差はありますが、時間は誰にとっても有限です。早く検査をしてご自身の体の状態を知ることができれば、それだけ早く対策を立てることができ、治療の選択肢も広がります。キャリアやご自身の仕事とのバランスは非常に難しい問題ですが、「まだ大丈夫」と思わずに、ぜひ早めに相談に来ていただきたいですね。
ーー相談に来られる際は、ご夫婦で来院される方が多いのでしょうか?
高橋院長
はい、ほとんどの方がご夫婦でいらっしゃいます。不妊の原因は女性側だけにあるとは限りませんし、何よりも治療を進めていく上ではパートナーの理解とサポートが不可欠です。お二人で一緒に話を聞き、同じ方向を向いて治療に取り組むことが、精神的な支えにもなります。
あさひレディスクリニックのこれから
中国で医学を学び、アメリカでの研究生活を経て、日本の医療現場の最前線で活躍してきた高橋院長。
高橋先生が医師を目指したきっかけやこれからの展望についてお聞きしました。
ーー先生が産婦人科医を志したきっかけを教えてください。
高橋院長
一番大きなきっかけは、助産師だった母の存在です。私がまだ小学生になる前だったと思いますが、近所で産気づいた方がいて、母がその場で赤ちゃんを取り上げたことがあったんです。偶然通りがかっただけだったのですが、母が赤ちゃんを取り上げたその姿と、赤ちゃんが入っていた桶の光景は、今でも鮮明に覚えています。その体験が、生命の誕生に関わる仕事への憧れとして、私の心に深く刻まれました。その後、東京大学医学部附属病院に勤務していた頃、上司が顕微授精を行っている姿を目の当たりにして、その技術の繊細さと可能性に強く感銘を受けました。それが、不妊治療という専門分野に深く進むきっかけになりましたね。
ーー実際に不妊治療の現場で診療されている中で、何か課題に感じることはありますか?
高橋院長
保険診療が始まったことで多くの方が治療を受けやすくなった反面、制度上のさまざまな制限が出てきたことには、もどかしさを感じることがあります。例えば、お子さん一人を授かるまでの保険適用の治療回数には上限が設けられています。そのため、保険が適用されることで、かえって選択肢が狭まってしまうようなことがないよう、制度の範囲内で何ができるのか、医師として常に最善を尽くしていきたいと考えています。
ーー最後に、この記事を読んでくださっている読者へメッセージをお願いします。
高橋院長
働きながらの通院は、時間的にも精神的にも大変なことが多いと理解しています。当院では、その負担を少しでも減らせるよう、駅から近い便利な場所にクリニックを構え、心安らぐ空間をご用意しました。不妊治療では、質の良い成熟した卵子を採取することが大切です。そのために、私が十数年にわたって培ってきた経験と技術をすべて注ぎ込み、お一人おひとりに合った治療法をご提案したいと考えています。そして何よりも大切なのは、ご自身の身体をよく知ることです。毎月きちんと生理が来ていても、それが妊娠できる身体であるとは限りません。結婚の有無にかかわらず、少しでも不安なことや気になることがあれば、どうか一人で抱え込まず、専門家である私たちに相談してください。
あさひレディスクリニック
| 診療科目 | 生殖補助医療(ART)、一般不妊治療婦人科、男性不妊(準備中) |
|---|---|
| 住所 | 〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町1‐13 chomp chomp AKIHABARA 10F |
| 診療日 | (月・火・水・木・金)8:30-13:40 |
| 休診日 | 日 |
| 院長 | 高橋 青子 |
| TEL | 03-3251-3588 |
| 最寄駅 | JR山手線・総武線・中央線・京浜東北線「秋葉原駅」中央南口より徒歩1分 東京メトロ日比谷線「秋葉原駅」3番出口より徒歩1分 つくばエクスプレス「秋葉原駅」A1出口より徒歩1分 |

